【建設現場入門⑧】建設現場で働く人の特徴 – 登場人物を理解して働きやすい環境を作る
建設現場では誰と関わるの?それぞれどんな立場で、何を考えているの?
この記事では、あなたを中心に建設現場で関わる人々について詳しく解説します。
人間関係の全体像を理解することで、実際の現場で戸惑うことなく、自分から働きやすい環境を作れるようになります。
なぜ「人」を理解することが重要なのか
これまで学んできたこと
- 建設現場の1日の流れ
- 建設現場の環境(7つの視点)
- 必要なスキル(文章力・判断力・図面と工程の活用)
今回は、これらの知識に「人」の視点を加えます。
この研修の目的
あなたが働く環境を俯瞰的に理解し、実際に現場に出たときに自分自身が働きやすい環境を作りやすくすること
目の前のミクロ(細かい部分)を見るだけではなく、マクロ(俯瞰して)建設現場の人の関係性を理解しておけば、
- 自分がやっていることが適切かどうか判断できる
- 自分の判断が全体に与える影響を考えられる
- トラブルを未然に防げる
- スムーズなコミュニケーションができる
これらが可能になり、結果として仕事がしやすくなります。
建設現場の登場人物(組織)
建設現場であなたが接点を持つ主な人達
- 発注者(施主)
- 設計者
- ゼネコン(あなたが所属する組織)
- サブコン(下請け業者)
- 職人
- 検査員
- 警察
- 役所関係者
それでは、それぞれの立場と役割、そしてあなたとの関わり方を詳しく見ていきましょう。
1. 発注者(施主)
基本情報
発注者とは?
建物を発注した人や組織で、「施主」と呼ばれることもあります。
あなたとの接点
主な接点:定例会議
現場には「定例会議」という定期的に実施する現場の進捗や未決定事項の確認をするための会議があります。発注者はこの会議に出席するため現場事務所に来ます。
配属初期
- 定例会議のときに挨拶をする程度の関係性
主任以上の役職になると
- 実際に定例会議にも出席するため直接話す機会が増える
その他の接点
- 竣工間近の施主竣工検査
- 引き渡しの際
発注者の特徴
お金を握っている人物なので、
- 発言権が強い
- みんなが気を使う
- よっぽどのことがない限り発注者の言うことに従う
ただし、現場所長が戦略的に状況をコントロールすることもあります。
覚えておくこと: 建物を発注した人物(組織)で、発言権が強く、定期的に現場に来る人
2. 設計者
基本情報
設計者の役割
- 発注者から依頼を受けて建物の設計をする
- 発注者に代わって建築主事または指定の確認検査機関へ計画を申請する
- ゼネコンが工事を進める際、その工事がきちんと行われているかを監理する
あなたとの接点
定例会議への出席:発注者同様、定例会議に出席します。
各種検査の実施:定例会議以外でも、建物の品質などを監理するために各種検査を実施します。
配属初期:接点は少ない
工事を任せてもらえるようになると
- その工事の設計検査を実施するため接点が増える
- 書類作成から当日の立会、指摘事項の是正管理まで一式担当
- 検査日程の調整連絡やメールでの様々なやり取り
重要なポイント
設計者は味方にしておくべき存在です。
設計者とは比較的会話をすることが多く、良好な関係を築くことが工事の円滑な進行につながります。
3. ゼネコン(あなたの組織)
基本情報
ゼネコンは最も多く接点のある存在です。
組織構造
基本的な3つの役職
- 所長
- 主任(工事長)
- 係員
現場の規模によって
- 統括所長
- 副所長
- 工務所長 などが追加される
大規模現場の場合: 主任も複数人配置され、それぞれが特定の工事を担当
- 外装担当主任
- 内装担当主任
- 躯体担当主任 など
評価の流れ
あなたを現場で評価する流れ
あなた
↓
5年未満の係員または主任
↓
所長(最終責任者)
キーマンを押さえることが重要です。
3-1. 所長の役割と視点
主な役割
現場全体の統括的な管理
- 決められた予算内での工事遂行
- 目標利益の達成
- 現場に関わる全てを間接的・直接的にコントロール
所長の評価基準
最も重要なのは「利益」です。
建物が完成し竣工したら、所長は自分の会社に実績を報告します。もし利益が未達成であれば、その理由を問われます。
どうしようもない外的要因などがない限り、利益が実質的な所長の評価になります。
所長の特徴
お金に関して口うるさいことが多い理由は?
評価基準が利益だから
所長とそれ以外の人の温度差
評価基準が異なるため、仕事に取り組む視点や温度感に違いがあることがよくあります。
覚えておくべきこと
所長の評価は利益。
これを理解していれば、所長が何に気をつけていて、どんなことを重要視しているのかが自ずと分かります。
3-2. 主任の役割と視点
主な役割
現場の運営を任される存在
「施工管理」と聞いてイメージする仕事が一番近いのが主任です。
具体的な業務
- 図面チェック
- 工程表の作成
- 打ち合わせ
- 進捗管理
- 品質管理
- 検査対応 など
これらの代表的な施工管理の業務を計画・実行します。
主任の評価基準
- 判断力
- 現場の遂行力
- 部下の育成
主任の特徴
現場の雰囲気は所長の影響が非常に大きいですが、現場の進みは主任に大きく依存します。
活躍する主任の特徴
- 若い頃に雑用をたくさん経験している
- 現場で働く人の気持ちが理解できている
- 所長とコミュニケーションを取れる
主任の役割は、「みんなの安心感を担っている存在」
経験値が非常に重要: これまでどのような経験をしてきて、どのような判断をしてきたのかが現場運営に大きく影響します。
3-3. 係員の役割と視点(あなたのポジション)
主な役割
主任の指示のもと、現場の職人さんに実際に指示をしたり、現場運営の細かい部分を支えている存在
係員に求められること
- フットワークの軽さ
- 報連相
- 明るい笑顔と大きな声
係員の特徴
職人さんともっとも長く接し、職人さんの気持ちを一番理解しているのが係員です。
この研修を聞いているあなたは、この係員の補助もしくは係員のポジションを求められることになるはずです。
係員の重要性
職人さんたちと現場監督をつなぐ重要な役割
- 職人さんが気持ちよく働けると工事の進捗が良くなる
- そうすれば主任も喜ぶし、所長も喜ぶ
- 職人さんとの関係性が、あなたを評価する上司の評価にも紐づく
この時期に大切なこと
たくさん職人さんと会話をして、苦労をともに味わい、経験を積み上げることが将来の貯蓄になります。
注意点
職人さんと現場監督をつなぐ存在なので、情報を滞らせるとトラブルになります。
- 職人さんから言われたこと
- 主任から言われたこと
これらを自分で噛み砕き、情報を円滑に流すことが大切です。
あなたへのメッセージ
目の前の人が何を考え、何を求めているのか?
その意図を読み取り、適切に報連相する練習をたくさんしてください。
この研修で学んだことをコツコツ実行することが一番の近道です。自信を持っていきましょう。
4. サブコン(下請け業者)
基本情報
サブコンとは?
一般的に電気工事や機械設備工事の事業者を指すことが多いですが、厳密にはゼネコンから仕事を請け負っている業者のことを指します。
該当する業者
- 電気工事業者
- 機械設備工事業者
- 大工さん
- ペンキ屋さん など
サブコンの役割
設計図をもとにゼネコンと専門的な工事を契約して業務を進めます。
あなたとの接点
初期段階
主にサブコンの社長や担当者と、ゼネコンの所長や主任が打ち合わせをします。
工事が始まる頃
ここからあなたの出番です。
その専門工事を進めるために必要な資材や工程、工事場所の段取りを一緒に進めます。
重要なポイント
サブコンの工事が始まる前には、必ず現地を一緒に見ながら段取りのリストを作って進めてください。
任せっきりだと
- 絶対にうまくいかない
- 言った言わないのトラブルの原因になる
初めての打ち合わせで押さえるべきポイント
あなたが初めて業者と打ち合わせをすることになったとき、「一体何を打ち合わせすればいいのか?」となると思います。
5W1Hで整理しましょう!
項目 内容 具体例 いつ(When) 工程 工程表で確認 誰が誰に(Who) ゼネコンとサブコンの関係性 担当者の明確化 何を(What) 工事内容 具体的な作業範囲 なぜ(Why) 今回の工事の進め方や工法を選択した理由 背景の理解 どうやって(How) 施工方法や手順 具体的な作業工程 いくらで(How much) その工事にかかる契約金額とその内訳 契約書・工事内訳
打ち合わせの準備: これらを一つずつ埋めていき、実際に現場を自分自身の目で確認してから打ち合わせに臨めばバッチリです。
いくらで(契約金額)の重要性
契約書や工事内訳を確認してください。
記載されていること:
- 細かな準備資材
- 運搬の取り決め(ゼネコンとサブコンどちらが担当するか)
明記されていなければ事前に決めておくとスムーズです。
面白い事例:資材の上下移動と横移動
上下移動: クレーンや工事用エレベーターを使っての資材の上下はゼネコンが担当
横移動: 荷揚げした資材を横移動するのはサブコンの責任(手配)で実施
なぜこうなるのか: 物の移動は機械や人間が実施しますが、その手配をどちらがやるか、つまりお金はどちらが持つのかを明確にして進める必要があるからです。
仕事にはお金がかかりますし、お金を稼ぐために各社仕事をしているので重要なポイントです。
5. 職人
基本情報
職人さんとは: 先ほどのサブコンの専門業者に所属している人たち。実際に作業をする人たちです。
あなたは彼らともっとも多くの時間を過ごすことになるはずです。
職人さんの多様性
いろんな人がいて、経歴も考え方も千差万別です。
- 中学を卒業したときから職人をやっている人
- 一度違う仕事をして職人になった人
私が接した職人さんの前職:
- 俳優
- 株のトレーダー
- プロゲーマー
- パティシエ など様々
いろんな経歴があるので、ぜひ仕事以外の話もしてみてください。面白いですよ。
職人さんが好きな人
職人さんは:
- 仕事の出来はともかく一所懸命働いている人が好き
- 熱量を持って働く人が好き
だから: あなたが未経験だろうとなんだろうと、本気で仕事に向き合い、彼らに本気で接すれば、きっと仲良くなれると思います。
職人さんを味方につける重要性
現場で職人さんを味方につけたら本当に心強い。
なぜなら:
職人さんが気持ちよく働く
↓
現場が進捗する
↓
主任も喜ぶ、所長も喜ぶ
↓
あなたの評価が上がる
職人さんから認められることは、あなた自身の評価が上がることと同義です。
職人さんとの関係性が、あなたを評価する上司の評価にも紐づくのです。
ぜひ職人さんたちと仲良くなって、いろいろな話をしてみてください。
6. 検査員
基本情報
検査のタイミング: 工事を進めていくと、一定進むごとに検査を受けます。
代表的な検査:
- 基礎検査
- 2階床検査
- 上棟時検査
- 内装検査
- 竣工時検査
大きく分けると:基礎・中間・完了の3段階
検査員とは
検査員の所属:
- 基本的には役所の人(自治体の建築主事)
- もしくは役所から委託された民間の検査会社(確認検査機関)の人
検査の内容
何を検査するのか: 図書整合(設計図と現場の整合性)
具体的な確認項目:
- 工事写真の確認
- ここであなたが撮影した工事写真が活躍します
- 工事が進んですでに見ることができない部分などの工事写真を設計図書と比べながら確認
- 監理記録の確認
- 監理者の検査の指摘事項
- その是正記録
- 品質書類の確認
- 品質書類一式を確認
- 現場の確認
- 書類の検査が終われば現場に出ていく
- 実際の施工も図書整合の視点で問題がないかチェック
指摘が出た場合
対応方法:
- 書類と写真にて記録をして是正報告をする
ポイント: もしその場で修正ができるならば、即座に修正してその場で是正を確認してもらう
理由:後で役所や検査機関に出向いて是正報告をする手間が省ける
検査前にあなたが確認すること
当日の準備:
- 現場の通路確保
- 整理整頓状況
- 関係者への検査箇所の共有
- 当日の流れ説明
書類関係の準備: 5. 工事写真の整理 6. 必要な品質書類の準備
検査前の徹夜問題
よくある失敗パターン:
- 検査前に徹夜になる
- たいてい写真整理や必要な品質書類の準備が原因
- 多くの人は忙しさや面倒という感情から後回しにする
- 前日に焦って徹夜
- 不足書類を手配できないまま検査を受ける
この研修を受講したあなたは: 普段からこまめに準備しておけば定時に帰れます。しっかりと準備をして臨みましょう。
目指すべき目標: 検査前は定時に帰る。これを目指しましょう。
7. 警察
主な接点
警察との接点の多くは:
- 道路使用許可
- 盗難
7-1. 道路使用許可
道路使用許可が必要な場合:
- 現場の前面道路に車を横付けする
- 歩行者を迂回させる など
申請場所: 警察署
準備するもの:
- 申請の頭紙
- 配置図(誰がどうやってが明確な図面)
- 工程表
- 3000円程度の現金
申請時の注意点
この仕事は結構若手の担当になります。
警察署の担当者に聞かれること:
- 目的
- 工事の進め方
- 警備員の配置
- 歩行者などの第三者の動線 など、その工事に関することを根掘り葉掘り聞かれる
よく理解して臨みましょう。
よくある失敗: 申請を突き返されて出し直しになることもしばしば
対策: 余裕を持って申請をするクセをつけましょう
申請のちょっとした裏話
ちなみに、警察も人間なので可愛らしい女性が申請に行くとすんなり許可が降りたりすることもあります(実際に私の経験です)。
これも戦略なのでしょうか…
7-2. 盗難
工事現場の現実:
- 工事現場は仮囲いで囲まれている
- しかし入ろうと思ったら入ることができる状態
盗難の対象:
- 工事に使う電動工具
- 銅線
- 鉄板
- 自動販売機
盗難が発生したら: 朝現場に行ったら鍵が壊されていて警察を呼ぶといったこともたまにあります。
あなたがすべきこと: そのような状況に立ち会うことがあれば、すぐに主任や所長に連絡して指示を仰いでください。
自分ではどうすることもできませんから、専門家に任せましょう。
覚えておいてください: 焦らず落ち着いて。迷ったら所長にまず連絡。
8. 役所関係者
検査以外の関わり
検査のセクションで話した建築主事検査以外でも、役所の方々が建物に関わることがあります。
関係する役所の部署
建物を建設する場所や条件によって関係する役所関係者も様々:
- 景観
- 開発許可
- 道路
- 上下水道
- 消防
- 環境規制 など
基準と確認方法
基本的には: 各種法律の適用状況が基準
確認方法: 詳しくは設計図書に記載があるのでそれを確認しましょう。
設計図書には関連法規の該当が記載されています。
まとめ:俯瞰的な視点を持つ
建設現場の登場人物の全体像
以上が建設現場であなたが関わる人達です。
自分を中心にどのような人が、どんな目的で現場に関わるのか
ざっくりと概要を理解しておくと:
- 現場を俯瞰して見ることができる
- 現場の状況の理解も早まる
- 適切な判断ができる
- コミュニケーションがスムーズになる
講師からのメッセージ
私は経験しながら学びましたが、ぜひこの情報は先に知っておきたかった内容です。
ぜひこの情報を活用して、視野を広く現場を眺めてみてください。
仕事は「人」を中心に考える
仕事は「人」を中心に視点を変えると:
- いろいろな見方ができる
- 理解も深まる
- 働きやすい環境を自分で作れる
現場ライフ、楽しんでください。
理解度チェック
この動画を見て、以下の質問に答えられますか?
- 建設現場の主な登場人物8つを挙げられる?
- 所長・主任・係員それぞれの役割と評価基準を説明できる?
- サブコンとの打ち合わせで押さえるべき5W1Hを覚えている?
- 検査前の準備で重要なポイントを理解している?
AIあっきーと対話してみよう!
現場でどんな人とどのように関わりたいか、自分の考えを整理してみてください。
次のステップ
建設現場で働く人々を理解したら、次は実際のコミュニケーション実践について学びましょう。
次の記事:【建設現場入門⑨】効果的なコミュニケーション実践

