【建設現場入門⑫】工程の理解 – 竣工からの逆算と建築・設備の連携
工程表って何のために作るの?どう活用するの?
この記事では、工程表の種類と作成の考え方、そして最も重要な「建築と設備の連携」について解説します。工程表は単なるスケジュール管理ではなく、戦略的なツールです。
工程表とは何か
一つ前の研修では図面について学びました。今回は工程表です。
工程表と聞くとどのようなものをイメージしますか?そしてなんのために作り、活用すると思いますか?
会話力と工程表の関係
私が何度もあなたにお伝えしているのは「会話力」の大切さです。
なぜ「会話力」が大切か覚えていますか?
仕事で大切になるのは、言葉を使って自分の頭の中で考えていることを目の前の人に伝えて行動してもらうこと。これが基本です。
そしてそのために図面や工程を活用するのです。
図面と工程の共通点
図面は実際につくる人が困らないように、欲しい寸法やわかりやすい表現がポイントです。
工程表も同じようなポイントがあります。
なぜ工程表が必要なのか
工程表の必要性を考える際、「工程表がなかった場合」を考えるとわかりやすいです。
建物を建設する目的
決められたお金で、決められた品質のものを、決められた期間内に完成させること。
工程表はこの「決められた期間」という管理項目に大きく貢献します。
時間認識のズレ
あなたは「朝一番」とか「月末」と聞くといつをイメージしますか?
朝一番は人によっては
- 6時かもしれません
- 8時かもしれません
- 10時かもしれません
月末と聞くと
- 25日をイメージする人
- 30日をイメージする人
- 最終営業日をイメージする人
- 土日も含めた本当の最終日をイメージする人
仕事には期限がつきものですが、この期限というのは人によって結構認識のばらつきがあるのです。
工程表がない場合のシミュレーション
仮に工程表がなかったらどうなるのか?
「この仕事月末までにやってください」のような日常的にありそうな指示を工程表無しでした場合、
- 田中さんは25日までと理解
- 鈴木さんは最終営業日と理解
- 佐藤さんは土日も含めた最終日までに終わり、翌月朝までに完了していればOKという理解
工事がうまく進むと思いますか?絶対にうまく進みません。
工程表の役割
この個人の認識、常識のズレを解消し、明確に時間軸の認識を合わせることができるのが「工程表」なのです。
まずはこの工程表の役割をしっかり理解してください。
工程表作成の視点「利用者目線」
そして図面同様、工程表をつくる際に大切になるのは利用者の目線です。
その工程表を使うのは誰ですか?
- 施主
- 設計
- 施工管理
- 職人
様々な人が利用します。
そしてそれぞれの立場の人が工程表に求める情報には若干のズレが有るのです。
だから工程表には種類があります。
工程表の種類
主な工程表の種類
- マスター工程
- 月間工程
- 週間工程
- 絵工程
そしてそれぞれの工程表にも表現するべき情報と表現しなくても良い情報があります。
だから施主設計が出席する会議用にわざわざ工程表を作り直したりすることもあります。
1. マスター工程表
位置づけ
工事全体のスケジュールを表現しています。
単なるスケジュール管理ではなく、プロジェクト全体を俯瞰的に見ること、そして判断をするための戦略的なツールとなります。
記載されている情報
プロジェクト基本情報
- 物件名
- 所在地
- 発注者
- 施工者
- 工事概要
- 着工日、竣工日、引渡日
主要マイルストーン
- 着工
- 根切り完了
- 躯体工事完了
- 上棟
- 外装完了
- 内装完了
- 設備試運転調整
- 竣工検査
- 引き渡し
法定検査、官庁検査
発注、承認タイミング: サッシ、エレベーター、変電設備等納期に時間がかかる主要製作物
工種別の大区分期間
- 仮設工事期間
- 土工事期間
- 躯体工事期間
- 外装工事期間
- 内装・設備工事期間
- 外構工事期間
制約条件、特記事項
- GWなど施工不可能期間
- 近隣協定に伴う作業時間制限
- 段階的な引き渡しがある場合その日程
- 特殊工法による制約
2. 月間工程表
位置づけ
月間工程はマスター工程を実行可能なレベルまで分解したものです。
目的
- 短期的な進捗管理:週単位での遅延を早期発見
- 資源配分の最適化:人・物・金の投入タイミング調整
- 関係者間の調整:複数工種の取り合い管理
- 次月計画の基礎:実績を反映した精度の高い計画立案
最も活用される工程表
月間工程表をみて現場の職人さんは手配や進捗管理、取り合い管理を行います。
最も現場で多く見られ、活用される工程表です。
作成に必要な能力
月間工程を作成するためには工事のすべてを理解しておく必要があります。
やればわかりますが、本当に「いつ、誰が、何のために、何人で(いくらで)」がすべての工事に対してイメージできるほど経験がないと作ることができない工程表です。
目指すべきレベル
月間工程表を書くことができれば、
- 現場のコントロールができる
- 様々な判断が即座にできるような状態になる
まず目指すところは月間工程表を書くことができるレベルになることです。
3. 週間工程表
月間工程表を更に細かくし、日単位や半日単位で工事の進め方を表現するものです。
月間工程表が細かく検討され、表現されていれば必ずしも必要な工程表ではないと思います。
4. 絵工程
位置づけと用途
絵工程は非常に大切で、平面的に複数の情報を表現する必要がある外構工事などに活用されます。
なぜ必要なのか
一般的に工程表はバーや線で表現されますが、それはフロア単位や東面など大きな範囲ごとに特定の工事が進むことが多いからです。
一方で以下のような工事は絵工程が効果的です。
- 外構工事
- 足場解体
- エントランスの仕上げ工事
一箇所で入れ代わり立ち代わり複数の工事が密接に絡み合いながら進む場合、絵工程でなければ表現が難しいのです。
工程表の作り方「竣工からの逆算」
配属後すぐに工程表を作ることはないと思いますが、工程表の作り方は知っておいて損はないと思います。工程表の理解が深まるからです。
基本原則
図面と同様、工程表も最後から逆算して考えます。
積み上げ式の工程作成もありますが、あくまで譲ることができない決定事項「引き渡し」から逆算して工程表を考えます。
作成手順
1. 最後から押さえる
引き渡し→竣工検査期間→クリーニングなど最後に必要な行事や工事に必要な期間を考えます
2. 主要工事を配置
そのうえであとは躯体工事と内装工事を当てはめて、微調整し、全体のバランスを考えます
3. バッファを考慮
工事は外で行うため
- 梅雨
- 台風
- 雪
- 灼熱
品質や作業環境も考慮してバッファを持たせて検討する必要があります
4. 固定事項から組み立てる
どうしても動かすことができない行事や工事のタイミングを先に押さえて、他を組み込みます
5. バランスを取る
施工性や品質、経済性を考えてバランスを取ります
最重要!建築と設備の取り合い
最後に工程表で大切なポイントをお伝えします。
それは建築と「設備の取り合い」です。
一般的な流れ
マスター工程表や月間工程表は建築が作り、その工程に合わせて設備が検討することが一般的です。
建築側の責任
建築側の人は設備の施工期間も十分に考慮して工程表を計画しないと工事自体が成り立ちません。
使えない工程表というやつです。
設備側の責任
設備は建築側に十分に情報提供をして、必要な工事期間のすり合わせや合意形成を行う必要があります。
よくある問題
工事の流れが悪かったり何処かにひずみが生じる場合は、この建築と設備の工事調整がうまく行っていないことが大きな原因の一つです。
そして実際多くの現場で建築と設備の調整不足によるトラブルや工期遅延が多発しています。
お互いを思いやる
建築、設備どちらの技術者も自分のことだけ考えるのではなく、お互いのことを考え思いやりを持った工程作成をするように心がけましょう。
これは本当にポイントです。
余談「両方を理解することの価値」
世の中のゼネコン・サブコンはお互いの仕事をあまり理解していません。
- 建築は建築のこと
- サブコンはサブコンのこと
を中心に考えており、相手の仕事について詳しく知ろうとしません。
貴重な人材
だからこそ両方のこと、もっというと建築と設備の仕事の進め方や苦労するポイントなどを理解している施工管理は貴重です。
派遣ビジネスモデルの長所
「派遣」というビジネスモデルの長所は、両方の現場をそれぞれの視点で経験することができることです。
まとめ
今回は工程表について深堀りました。
実際の工程表作成には経験が必要
実際に工程表を作るためには、現場に出て工事を見る必要があります。
見て経験しなければ机上の空論、それどころか一つも線が引けないと思います。
だから今回は「考え方」を中心に話をしました。
学んだこと
- 工程表の種類やそれぞれの役割を理解
- 工程表の組み立て方の基本
- 建築と設備の連携が非常に大切であること
この研修の活用方法
今日のこの研修は定期的に振り返っていただき、実際に工程表を作るときにも見返してほしいです。
基本的な考え方の理解に役立つはずです。
図面と工程、ぜひ極めて活躍しましょう!
理解度チェック
以下の質問に答えられますか?
- 工程表がない場合に起こる問題を説明できる?
- 4つの工程表の種類とそれぞれの役割を理解している?
- 工程表を「竣工からの逆算」で作る理由を説明できる?
- なぜ建築と設備の連携が最重要なのか理解している?
AIあっきーと対話してみよう!
工程表について疑問に思ったことや、建築と設備の連携について考えたことを対話してみてください。
次のステップ
図面と工程の理解を深めたら、次は安全管理の実践について学びましょう。
次の記事:【建設現場入門⑬】安全管理の実践

