【建設現場入門⑨】工事の流れ理解 – 仮設工事から竣工まで
「工事」と言われても、どこから手をつけていいのかわからない…
この記事では、建設工事全体の流れを「建物を土地に置く」という極限までシンプルな考え方から解説します。工事の本質を理解すれば、施工計画や工程表の見方が劇的に変わります。
この研修の目的
今回は工事の流れについて話をします。
自分自身が工事の中で何を任されて、具体的に何をするのか。
工事全体の流れを理解したうえで、実際にあなたがどのようなことをやるのかを深掘りしていきます。
「建物を建てる」を極限までシンプルに考える
思考実験
目の前に土地があります。10階建てのマンションを建設します。
最も簡単な方法は何でしょう?
答え:完成された建物をどうにか持ってきて、その土地に置くこと
これができたら楽ですよね。置くだけですから。
なぜそれができないのか
でも実際はそうはいきません。
理由:大きすぎます
- 運んでくる方法がない
- 空輸も陸路も不可能
- どう考えたって大きすぎて持ってこれない
だったらどうする?
答え:分解して持ってきて現地で組み立てればいい
これが「建物を建てる」をシンプルに考えて見えることです。
現場条件が施工方法を決める
基本原則
建物を建設する際、やり方はその土地、建てる建物で変わってきます。
具体例:前面道路による制約
前面道路の幅を考える
前面道路幅
↓
通れる最大のトラックが決まる
↓
トラックに乗せられる最大サイズが決まる
↓
分解の最大サイズが決まる
前面道路が狭いと
- 使用できる重機や工法が限られる
- 施工に時間がかかる
工事期間の考え方
大きなものを1回で持ってくる場合: 工期は短い
小さく分解したものを何往復もして持ってくる場合: 工期は長い
「建物を建てる」という行為についての基本的な考え方、理解できたでしょうか?
工事の流れ:ステップバイステップ
ステップ1:共通仮設工事
工事を進めるための準備
建物を建設するにも、そこで働く職人さんが休憩する場所やトイレ、水道、ゲートなど様々な設備が必要です。
必要な設備:
- 現場事務所
- トイレ
- 水道
- ゲート
- 自動販売機
- 仮囲い(近所の子供や動物の侵入を防ぐ)
これが共通仮設です。
工事を進めるために必要な仮設の準備ができたら、次は実際に工事を進めます。
ステップ2:基礎工事の準備
基礎の必要性
建物には基礎というものが必要です。基礎がなければ建物がバタンと倒れてしまいます。
さらに日本は大きな地震が来ても建物は耐え抜かねばなりません。
基礎は地上ではなく地中に構築します(杭、基礎などと表現されます)
ステップ3:山留め工事
穴を掘る問題
地中にこれらの構造を埋め込むためには、土を掘る必要があります。
大きな穴を掘ったらどうなりますか?
砂遊びを想像するとわかります。砂場で穴を掘ると崩れますよね?
- 90度の角度で掘ったら崩れやすい
- 45度くらいで掘ると崩れにくい
対応方法は以下。
オープンカット: 角度をつけて穴を掘って工事を進める
山留め: 街なかでは角度をつけて掘削することは難しいので「山留め」を利用
山留めとは?
- 仮設物で土を掘削するためにH鋼などを地中に圧入
- 簡単に言うと、掘る範囲を囲って仮に壁を作る
- 穴を掘っても周りの土が崩れてこないようにする
ステップ4:土工事(根伐り)
根伐りとは: 穴を掘ることを根伐りといいます。土工事の始まりです。
作業内容
- 穴を掘る
- 土を場外に搬出する
使用する重機
- ユンボ(穴を掘る専用重機)
- ダンプカー(土を搬出)
工事計画の考え方
ここで質問
建物の敷地奥の方から掘り進めないと、手前から掘り始めたらどうなりますか?
答え
ダンプやユンボの配置が物理的に成り立たなくなります
これが工事計画です。
- 目的がある
- どんな道具を使うか
- どんな時間軸で進めるか
- どのような手順で進めるか
これを考えます。
重要なポイント: 絶対的な決まりはなく、柔軟に考えます。
ステップ5:基礎コンクリート工事
施工順序
最初のコンクリート打設
基礎の鉄筋を組む
コンクリートを流し込む型を作る
基礎のコンクリートを打つ
ここまでで1階の床ができました。
ステップ6:躯体工事(建物を上に伸ばす)
足場の必要性
ここから先はひたすら上に建物を伸ばしていきます。
何もない空中に建物をどんどん作っていくので、足場が必要になります。
現場で鳶の発言力が強い理由
おそらく鳶が足場を組まなければ工事が始まらないから
RC造の場合の繰り返し作業
- 仮設の足場を組み立てる
- 型枠を組む
- 鉄筋を組む
- 設備が配管配線を仕込む
- コンクリート打設
この繰り返しで骨組みができます。
鉄骨造の場合
- 鉄骨を建てながら
- 足場を組み立てて
- 追いかけるように床のコンクリートを施工していく
ステップ7:内装工事
内装工事の開始タイミング
躯体工事を進めながら追いかけるように内装工事を進めます。
施工順序
- 配管や配線など
- 仕上げ物の裏に隠れいている設備工事を先に施工
- その上から目に見える最終的な仕上げを施工
- 天井や壁、床の仕上材を取り付けていく
内装工事の基本順序:天井から
柱や梁、壁床で囲われた躯体の空間において、内装を進める順番は基本的には天井からです。
理由: 脚立を立てたり資材を置いたりと、工事を進めるうえで最後まで何かしらの動きがあるのが床だから。
掃除も同じ考え方
掃除も上から下へ
ここは地球なので重力があります。だからホコリは下にたまります。
そのため掃除も上から順番に進め、最後に床の清掃をします。
工事の進め方には物理の法則を考えた順番があるのです。
ステップ8:外壁工事
理想と現実
理想: 上から順番に下へ下へと進める
現実: 躯体工事が下から積み上げているので、どうしても下から追いかける
なぜ下から施工するのか
- 工事期間が十分にあれば別
- そんなに余裕のある現場はない
- 躯体工事ができたら順次下から躯体工事を追いかけるように外壁工事を進める
外壁のクリーニング
問題: 外壁工事は下から順次進めるため、最初に施工した下の方は汚れる
対応: 外壁は最後にしっかりクリーニングを実施して、完成させる
ステップ9:共用部・外構工事
施工タイミング
基礎→躯体→内装外装と工事を進めたら、1階のエントランス周りなどの共用部と外構工事を進めます。
なぜ最後なのか?
1階エントランスや外構はすべての工事の通り道になるため、最後に施工することが多いです。
本当は、 進めることができる部分をどんどん進めるべき。
実際は、
- 人が多く通る
- 資材も多く通る
- 仮設物も仮置きする
- どうしても仕上げを進めることができない
- 傷がつく
- そもそも人通りが多くて工事にならない
ただし、施工が先にできる部分(天井の下地や一部壁など)は工事を進めます。
外構工事の開始
上階の内装外装工事も進み、大きな搬入物もなくなってきたら外構工事を順次進めます。
ステップ10:各種検査と引き渡し
検査の種類
外構工事もめどが付き始める頃には内装も片付いてきて、いよいよ検査です。
主な検査
- 自主検査
- 設計検査
- 施主検査
- 館長検査
無事に合格したら引き渡しとなります。
工事計画の考え方:抽象的思考
基本的な考え方
このように建物を立てることを抽象的に考えて、四角いものをその場所に設置するためにはどのような順序で進めるべきかを考えると、自ずと工事の進め方も明確になってきます。
工程表や施工計画書の作り方
俯瞰的に現場の条件を眺めて順序を決めていきます:
- 基本的な順序はある
- そのパターンに必ず従う必要はない
- 現場の条件や建てる建物の形などを総合的に考える
- 物理的に成り立つ順序で建設を進める
この考え方を理解すれば
大抵の施工計画や工程表などはイメージが付くようになると思います。
ぜひ理解し活用してみてください。
工事の流れ全体図
時系列での整理
1. 共通仮設工事
↓
2. 山留め工事
↓
3. 土工事(根伐り)
↓
4. 基礎工事
↓
5. 躯体工事(上へ上へ)
↓
6. 内装工事(天井→壁→床)
↓
7. 外壁工事(下から上へ)
↓
8. 共用部・外構工事
↓
9. 各種検査
↓
10. 引き渡し
重要な原則
- 物理的に成り立つ順序
- 前工程が次工程の土台
- 重力の影響を考慮
- 現場条件による柔軟な対応
まとめ
今回は「工事の流れ理解」ということで、仮設工事から竣工までの流れを理解しました。
考え方を知らなければ
- 難しい、大変と感じる
- どこから手を付けていいのかわからない
しかし基本的な考え方を理解するだけで
今回話した基本的な、そして当たり前な考え方を理解するだけで:
- その計画の妥当性がわかる
- 自分が担当する工事の進め方の検討ができる
あなたへのメッセージ
ぜひこれをきっかけに積極的に施工計画や工程の流れを眺めてみて、「自分なら」という視点で考えてもらえると嬉しいです。
この視点を持つことで:
- 工程表が読めるようになる
- 施工計画の意図が理解できる
- 自分で工事の順序を考えられるようになる
- トラブル時の対応が早くなる
理解度チェック
以下の質問に答えられますか?
- 「建物を建てる」を極限までシンプルに考えるとどうなる?
- 前面道路幅が施工方法に与える影響を説明できる?
- 内装工事を天井から始める理由を説明できる?
- 外構工事を最後に施工する理由を理解している?
AIあっきーと対話してみよう!
工事の流れで疑問に思った点や、もっと詳しく知りたい工程について対話してみてください。
次のステップ
工事の流れを理解したら、次は具体的な施工管理の実務について学びましょう。
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